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読解問題 Reading

開いた本 単色塗りつぶし

桃太郎と鬼の話

作者:桜美林大学 阿部文洋

 

昨今(さっこん)マンガやアニメをきっかけに日本語を学び始める人が増加しています。その中の一つ、鬼滅の刃に出てくる「鬼(おに)」をご存じの方も多いでしょう。鬼の話として、現代の日本人の誰もが知っているのは桃太郎(ももたろう)の話ではないでしょうか。「桃から生まれた桃太郎は、おじいさんおばあさんに養われたのち、鬼退治へと向かいます。その道中で出会うイヌ、サル、キジを、きび団子を褒美に家来として従え、鬼を退治後、鬼の宝を故郷に持ち帰りました。」という物語です。絵本などで鬼は、頭にウシのようなツノが生え、鋭いキバや爪をもち、トラ柄の腰巻きをしている独特な姿で描かれることが多いのですが、これはなぜなのでしょうか。また、なぜ桃太郎は動物を伴って鬼退治へ向かったのでしょうか。

 

この理由には様々な説がありますが、代表的な一説を紹介したいと思います。この話には中国を由来(ゆらい)とする陰陽五行(いんようごぎょう)思想を基にした陰陽道(おんみょうどう)が関係していると言われています。この陰陽道では、北東の方角を鬼が出入りする「鬼門(きもん)」として何事をも避けるべき大凶の方角とします。この鬼門の考えは、鬼門の方角には浴室やトイレを作るのを避けるべきとされるなど、現代にも影響を与えています。反対に南西の方角は鬼の出入りをふさぐ「裏鬼門」と言われています。

 

古来(こらい)、中国や日本では方角や時間、暦を表すのに十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)を組み合わせた干支(えと)を用いていました。そのうち十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の12種で、日本ではそれぞれに動物を当てはめ、順にネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、リュウ、ヘビ、ウマ、ヒツジ、サル、トリ、イヌ、イノシシとされています。子を真北として、時計回りに十二支を配置すると、北東の鬼門はちょうど丑と寅の間に当たります。この鬼門と丑、寅との結びつきから、丑すなわちウシの角を持ち、寅つまりトラのようなキバや爪で、トラ柄の腰巻きを身に着けた「鬼」のイメージが作られたと言われています。また、鬼に対抗する裏鬼門つまり南西の位置から時計回りに進むと申(サル)、酉(トリ)、戌(イヌ)となります。よって、桃太郎がお供として率いた家来の動物はサル、キジ、イヌとなったということです。

 

ここでは桃太郎の鬼と家来の動物に関する一説だけを紹介しましたが、他にも鬼とは何かということ、桃太郎はなぜリンゴ太郎でもミカン太郎でもなく「桃」太郎なのかということ、また物語の成り立ちなどにも様々な説があり、論争のあるところではあります。

 

日本に伝わるおとぎ話や昔話には文化や風習などいろいろな意味が込められているものがあります。また、アニメやマンガにはおとぎ話や昔話から着想されたものもあります。物語の背景から日本文化を探ってみませんか。

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